日本独自のことばを通して文学の世界をひらく

上代から近代にいたるまでの小説や詩歌、戯曲、評論など幅広い分野の作品講読や作家研究を行います。さらに、海外作品との比較を通じて日本文学の独自性を学ぶなど、国際的な視野からも日本の文学を考察します。自分の関心にあわせて時代や作品、作家、表現方法を絞り込んで研究を深め、さらには社会的・歴史的背景などを掘り下げ、各時代の人間の心理や感性、時代の精神や文化を広く学びます。文学は人間を語り、伝える手段。ことばが伝える人間の経験や思想を読み込むことで「人間とは何か」という問いに迫ります。

科目PICK UP

  • 文学概論

    「文学とは何か」という問いから出発し、多数の文学作品を分析・分類する理論を学ぶ。時代や社会を映しとり、垣根を越えて後世に伝えていく文学の力について考察し、理解を深める。

  • 日本語学特講

    日本語の歴史的変遷、言語的特徴について、文字・表記・音韻・文法などから分析する。方言やジェンダー、世代によるバイアスなどの視点も含めて言語を考察する方法を学ぶ。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    人文学の基礎を知る

    3専攻の分野をひと通り学ぶ
    1年次は専攻に所属せず、「歴史」「文学」「社会」の基礎を学び、分野の特長や研究手法の違いなどについて理解します。文化を構成する要素と現代社会の成り立ちを知り、自分の興味に基づき研究したいテーマを探します。

    広い知識とことばから、自分を知る
    ことばを通して自分や他者への理解を深めます。研究に必要となる、「興味があることを掘り下げテーマを設定する力」、「過去の研究や現場を調査する力」、「自分の考えを論理的にまとめ発表する力」を基礎から身につけます。

  2. 2年次

    SECOND

    専攻に所属。学外での本格的なフィールドワークへ

    専門知識の理解を深める
    文学専攻では、上代・中古・中世・近世・近代の日本文学研究を行います。批評理論や比較文学など、作品を分析する力を磨く科目のほか、世界の文学、神話や詩歌、説話・伝承など幅広い文学表現も学ぶことができます。

    キャンパスの外へ旅立ち研究する
    各専攻で学び獲得した知見を、実際にフィールドへ足を運んで検証します。6ヶ月間、キャンパスの外で異なる文化や社会に身を置いて、多様な価値観に触れることで実感を伴った知識を得、深めることができます。この経験が新たな視野となり、世界を広げ、独自の発想につながっていきます。

  3. 3年次

    THIRD

    得た知見をまとめ、 発表することで理解を深める

    調査結果を検証する
    現地調査によって収集したデータや資料を整理し、教員や仲間たちに報告。指摘や議論を通じてさらに視野を広げ、研究テーマへの理解を深めていきます。同時に、所属専攻の専門科目を通して、より深い知識と知見を身につけます。

  4. 4年次

    FOURTH

    卒業研究に取り組み、 自分の考えをかたちにする

    自分の考えを形にする
    3年次までに深めた知見をもとに、自分の考えを卒業論文として発表します。興味・関心のあるテーマを追究し、他者に伝わるよう情報を論理的にまとめる論文執筆には担当教員が親身に指導にあたり、構想を練るところから、文章校正まで一対一でアドバイスを行います。

4年間で身につく能力

  • ことばによる表現を緻密に読み解く力
  • 文学作品の特性を理解して客観的に批評する力
  • 国境を越えて、人や社会をつなぐ力

フィールドワークプログラム

2年次の6カ月間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。テーマは自身の興味や関心にあわせて自由に設定し、とことん追究できます。未知の場所で多様な価値観に出会い、自分を見つめなおすことは、身近な地域や文化への新たな視点の獲得につながっていきます。

学びのポイント
● 調査期間は半年~最長1年
 京都をはじめ国内は4カ所、海外は8カ所の国や地域から拠点を選んで研究できる
 実践的な調査力が身につく

調査の事例

  • 人気の小説の舞台を調査

    作品の舞台を巡り、小説で描かれた場所と実際の舞台を比較検証します。作品が物語を通して伝えたいメッセージを分析し、ヒットした要因を考察します。

  • 京都と王朝文化

    京都に都城が築かれ、京都が政治・経済・文化の中心となった平安時代を、歴史と文学の視角から分析を深めます。

卒業論文テーマ例

  • 平安時代の飲食表現 —紫式部と食

    平安時代に成立した文学作品は、飲食の喜びや味覚についての記述が非常に少ないことから、味覚を表現しない文学と言われている。しかし、少ないと言われながらも、飲食のことに全く触れられていないわけではない。そこで本論文では、『源氏物語』『紫式部日記』のほか『枕草子』、『宇津保物語』における食の記述を通して、紫式部の食に対する意識を明らかにすることを試みた。その結果、紫式部にとって食事は、特筆すべきことではなく、特に関心が低かったと思われるとの結論に至った。さらに、物語と日記に書かれる食事の比較を通して、飲食表現の傾向がみえた。その傾向として、場面転換、病、貧困の三つに分け、食描写の効果や意味を検討した。三つの食描写にはそれぞれ、時間の流れを感じさせる効果、病の進行具合や死を周囲の人物と読者に連想させる効果、貴族社会から外れた存在であることを浮き彫りにする効果がある。

  • 井原西鶴『本朝二十不孝』論 —浮世の「悪」からみる「戯作説」

    本論は、井原西鶴『本朝二十不孝』を取り上げ、谷脇理史氏の「戯作説」を根底に据えながら、さらに発展させ、〈浮世の「悪」〉というテーマに着目して、作品を分析したものである。谷脇氏の「戯作説」とは、これまでの西鶴研究で言われてきた教訓や批判を重要とするのではなく、西鶴が作品に描いた面白さを重要とした説である。作品の中で、どのように面白おかしく描いているのかを、西鶴が生きた元禄時代と西鶴が俳諧師であった経歴に着目しながら、作品を分析した。
    俳諧、特に西鶴が属した談林派は滑稽さが強く表れ、古典に日常的な言葉を織り交ぜるなどの特色を持つ。『本朝二十不孝』にも日常、つまり当時の町人社会(浮世)が映し出されている。また素材の逆転発想や数字を用いた誇張など、滑稽さが表れている部分が多くあった。よって『本朝二十不孝』では、俳諧の影響を受けながら、読者を楽しませようとする西鶴の意図が強くあったと考察した。

その他の論文テーマ例

 日本神話における聖数「八(や)」の意味
 和歌と漢詩における「月」 —十五夜
 平安時代の友情観 —紫式部を中心に
 桜の表現 —西行を中心に
 古典、絵巻からみる庶民の住まい
 隠形の男と百鬼夜行
 能・歌舞伎に見る六歌仙の変遷 —大伴黒主と小野小町を中心に
 北海道アイヌ文学における「善神」と「悪神」
 『裡家筭見通坐敷』における京伝店の描写
 学校教材の視点から見る桃太郎
 差別と文学 島崎藤村『破戒』から見る差別を扱うという事
 武者小路実篤の目指した理想郷 「新しい村」から見る明治~昭和の身分差
 メディアと流行語 —お笑い芸人が生む言葉の広がり
 〈水〉の心象表現が持つ想像力の可能性 —『崖の上のポニョ』の海から見る水のファンタジー
 「やばい」の意味と変化について —ことばの意味・用法の変化と日本社会との関係
 坂東眞砂子作品から見る犬神伝承の創作

卒業後の進路

分析・洞察力や問題解決力が強みになる
人文学科で培われる、文化や社会現象を分析する力や自ら問題を発見し解決する力、グローバルな視点で日本や京都文化を洞察する力は、幅広い分野で応用できます。編集者や学芸員、コンテンツ制作者はもちろん、ITや文化事業、教育産業、商品企画、観光など、今後の日本ビジネスの中心となるあらゆる業種で必要とされるでしょう。

めざせる職業
編集者、 ライター、 小説家、 学芸員、 学校教員、図書館司書、校正・校閲、書籍の流通、企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
出版社、広告制作業、 Web コンテンツ制作会社、NPO・NGO、行政機関、 製造業、 流通小売業、教育機関 など
 
 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。
履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。
京都精華大学の進路・就職サポート

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。

 高等学校教諭一種免許状(国語)
 中学校教諭一種免許状(国語)
 図書館司書
 博物館学芸員

VOICE

  • 山崎 風さん在学生

    幅広く学び、「文学」を 中心にどんどん興味が広がっていく

    もともと本を読むことが好きで、幅広く日本の文学が学べる大学を探して、人文学科に出会いました。私は平安時代の文学作品を研究するゼミに所属し、『源氏物語』に出てくる言葉の意味や文化的背景などについて調べています。今年は「和歌から見る友情観」をテーマに、図書館や資料館に加えて、寺院や美術館、博物館などいろんな場所を訪ねて調査を行いました。恋愛のイメージが強い和歌ですが、友情の歌もあるんです。漢詩の知識もつけながら、卒業論文で「友情とは何か」について深めていきたいと考えています。
     さまざまな時代の文学だけでなく、日本の文化や社会、歴史などの科目も広く履修できるのが人文学科ならではの魅力。最初は文学と他の分野は関係ないと考えていたのですが、作品が書かれた時代の背景を知っておくことはとても重要だと気が付きました。自分の研究に役立つのはもちろん、興味や関心が広がるきっかけにも。思わぬところでそれぞれの学びが繋がることもあり、発見の毎日です。将来の夢は図書館司書。大学で文学を学ぶうちに、みんなにもっと本を読んでもらいたいと思うようになりました。自分自身が、本との出会いを提供する側になれたら嬉しいですね。
  • 澤井 洋樹さん在学生

    人の心に触れられる物語の力に惹かれて。

    昔から物語が好きでした。物語を読めば、人々が抱く理想や欲望が見えてくるようで、心がはずみます。京都精華大学を選んだ理由は、人文学のほかにも芸術系の学部があって、自己表現や美の探究にも興味がある私にぴったりの大学だと感じたからです。面白い授業はたくさんあって、たとえば食を通して文学史をたどる「日本文学史」では、身近な食を切り口にして作品を読み込むことで、当時の暮らしが思い浮かび、人々の息遣いが感じられる気がしました。
    現代における物語の表現方法は、文学だけではありません。マンガやアニメ、それにゲームでも物語を伝えることができます。私自身も今はゲームの制作に挑戦しています。デジタル表現に詳しい他学部生にも協力してもらいながら、試行錯誤を重ねて作品をつくる日々です。
    国際文化学部の魅力は、好きなことを自由に追求できるところ。卒業論文のテーマもバラエティが豊かで、古典作品を扱う人もいれば、ゲーム作品を扱う人、コンセプトカフェを扱う人なども。自由な環境に惹かれる人なら、きっと充実した学生生活が送れると思います。
  • 是澤 範三教員

    神話や古代のことばの成り立ちから歴史と文化を学ぶ

    私が担当するのは「上代文学と神話、日本語の歴史」。『古事記』の神話を読んで内容を解釈し、なぜこのような神話が創られたのかを考えたり、古代日本語の語源を調査したりするゼミです。日本にはたくさんの神社がありますが、日本の神様や神話、古代のことばの成り立ちを知ることは、日本の歴史と文化を学ぶことでもあります。ことばの成り立ちを掘り下げたい人、神様と神話や歴史、神社やお寺に興味のある人におすすめです。
  • 三原 尚子教員

    文学作品を通して 未知の生活や感情を体験する。

    文学のおもしろさは、作品の読解を通じて、自分とはまったく異なる時代・立場・土地で暮らす人々の生活や感情を体験できるところにあります。京都精華大学の文学専攻には、さまざまな専門分野を研究する教員が在籍しています。そして、学生と教員が交流しやすいアットホームな雰囲気もあります。ここで学ぶみなさんには、多彩なジャンルの文学に触れられる環境で、たくさんの作品と出会い、広い視野を養ってほしいと思います。
    私は、俳諧における受容について研究しています。たとえば、松尾芭蕉はなぜ有名になったのか、作品はどう読まれてきたのか、芭蕉という人物はどのように理解されてきたのか、そういったことに関心があります。作品そのものよりも受容を研究対象にした理由は、私が文学だけでなく、歴史学や社会学にも関心があったからだと思います。文学専攻で学ぶなら、ぜひ幅広い分野に興味をもち、いろいろな世界に触れてみてください。文学とは関係がなさそうな趣味の世界でも構いません。友達や教員がおすすめしたものも試してみましょう。すべての経験が文学の研究に役立つはずです。私の座右の銘は、「やれることはすべてやる」。みなさんも、臆することなく、やれることはすべてやってみてください。