身近な問題から現代社会をよみとき、解決法を探る

社会専攻が研究対象とするのは、個人と集団との関係のなかで発生する諸問題です。それは教育、環境、メディア、ジェンダー、移民、宗教、貧困、戦争など、身近な問題でありながら世界規模の問題へと発展していった事柄です。これらの問題を解明する第一歩として、社会を多様な側面からとらえる力が必要になります。本専攻ではこの力を身につけるために、社会学の理論や方法論を歴史的背景とともに学びます。さらに、社会調査の手法についても基礎から修得。アンケート調査の手法や、現地におもむき五感を働かせて調査する「フィールドワーク」の手法を身につけることで、数値やデータの分析だけでは気づきにくい問題の本質に迫る力を養います。

科目PICK UP

  • ジェンダー論

    現在では、社会的・文化的役割の意を超え、「ジェンダーが社会や文化を構築する」と考えられるようになりました。現代思想との関係に着目しながら、ジェンダー論の展開について理解します。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    人文学の基礎を知る

    3専攻の分野をひと通り学ぶ
    1年次は専攻に所属せず、「歴史」「文学」「社会」の基礎を学び、分野の特長や研究手法の違いなどについて理解します。文化を構成する要素と現代社会の成り立ちを知り、自分の興味に基づき研究したいテーマを探します。

    広い知識とことばから、自分を知る
    ことばを通して自分や他者への理解を深めます。研究に必要となる、「興味があることを掘り下げテーマを設定する力」、「過去の研究や現場を調査する力」、「自分の考えを論理的にまとめ発表する力」を基礎から身につけます。

  2. 2年次

    SECOND

    専攻に所属。学外での本格的なフィールドワークへ

    専門知識の理解を深める
    社会専攻では、ジェンダーや貧困、災害、感染症など幅広いテーマで、現代社会のさまざまな課題の知識を深めます。人間の権利や安全保障について学ぶ科目もあり、現実の社会に研究を応用し、具体的に提案するための力を磨いていきます。

    キャンパスの外へ旅立ち研究する
    各専攻で学び獲得した知見を、実際にフィールドへ足を運んで検証します。6ヶ月間、キャンパスの外で異なる文化や社会に身を置いて、多様な価値観に触れることで実感を伴った知識を得、深めることができます。この経験が新たな視野となり、世界を広げ、独自の発想につながっていきます。

  3. 3年次

    THIRD

    得た知見をまとめ、 発表することで理解を深める

    調査結果を検証する
    現地調査によって収集したデータや資料を整理し、教員や仲間たちに報告。指摘や議論を通じてさらに視野を広げ、研究テーマへの理解を深めていきます。同時に、所属専攻の専門科目を通して、より深い知識と知見を身につけます。

  4. 4年次

    FOURTH

    卒業研究に取り組み、 自分の考えをかたちにする

    自分の考えを形にする
    3年次までに深めた知見をもとに、自分の考えを卒業論文として発表します。興味・関心のあるテーマを追究し、他者に伝わるよう情報を論理的にまとめる論文執筆には担当教員が親身に指導にあたり、構想を練るところから、文章校正まで一対一でアドバイスを行います。

4年間で身につく能力

  • 社会の課題を発見する力
  • 課題解決のアイデアを生み出す思考力
  • 現場で判断し、主体的に行動する力

フィールドワークプログラム

2年次の6カ月間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。テーマは自身の興味や関心にあわせて自由に設定し、とことん追究できます。未知の場所で多様な価値観に出会い、自分を見つめなおすことは、身近な地域や文化への新たな視点の獲得につながっていきます。

学びのポイント
● 調査期間は半年~最長1年
 京都をはじめ国内は4カ所、海外は8カ所の国や地域から拠点を選んで研究できる
 実践的な調査力が身につく
  • 自然環境の維持管理を考える

    京都市動物園をフィールドとして、動物園の運営に実践的に携わり、自然環境の現状やその歴史を調査することで、その維持管理の方法を考えます。

  • 周縁から社会を捉え直す

    京都の周縁に数多く存在する過疎や少子・高齢化に悩む地域の視点から、現代社会の問題を考えます。

  • 京都で企業と社会の関わりについて調査する。

    100年以上続く老舗企業だけでなく、いわゆるベンチャー企業にも目を向け、企業と社会との関わりについて調査します。

卒業論文テーマ例

  • 「相模原障害者施設殺傷事件」 に関する言説の分析

    2016 年7 月26 日、神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」において大規模な殺傷事件が起きた。入所者19 名が殺害され、施設職員を含む26 名が重軽症を負ったこの事件は、犯人の植松聖が施設の元職員であったこと、「障害者は不幸を生むだけ」という発言をしたことなどから大きな注目を集めた。植松の上記の発言や犯行へ賛同するインターネット上の声は、障害者の存在に肯定的な立場をとる人々によって「優生思想」や「障害者差別」という言葉をあてがわれ批判されてきた。しかし、それらは思想や差別など本質的で解決の目処のたたないものとしてこの事件を捉えることにもつながる。よって本稿では「優生思想」や「障害者差別」など、この事件について“語られた” ことではなく、障害者の存在に肯定的なもの・否定的なものも含め、それらが“なぜ語られたのか” について注目する。そのことによって植松やそれに共感する者のみを批判の対象とするのではなく、私たちが無意識のうちに前提としている構造の問題としてこの事件を捉え直す。

  • SNS 時代の新たな広告のあり方とは —新しい購買行動モデルの提唱と共に

    現在SNSの利用者は増加傾向にあり、今後も更なる発展が見込まれる。そのようなSNS 時代の今、SNS マーケティングの観点から見える広告のあり方やそれに伴う消費者の購買行動にも新たな変化があるのではないかと考えた。ここでのSNSマーケティングとはSNS を通じて顧客と繋がりコミュニケーションを行うマーケティング手法の事を指す。
    本論文では先行研究で見えた商品の精神的価値を主軸にしたマーケティングの変化を押さえつつ、3 つに分けた時代の購買行動と4 つのSNS を取り上げ、その形態や変遷、企業の実例を分析し、新たな広告のあり方を考察していく。消費者の購買を目的とせず、SNS の発展で「共感」から「拡散」の流れが成り立つ購買行動に加え、企業と消費者間のコミュニケーションの可視化によって、広告のあり方も、商品サービスの機能的側面のみをアピールするのではなく精神的アプローチで人に寄り添う形が求められていると考える。

その他の論文テーマ例

 現代社会のソーシャルメディア考察 —メディアを構成する個人に対する社会的役割
 現代日本の大衆社会とデモクラシー —個人と政府の関係についての考察
 現代社会における「手書き文字」の意味 —社会的構築主義からの考察
 日本野球における女子の存在 —女性プレーヤーの活躍はいつになるのか
 京都市のベンチャー企業の現状と課題
 地方創生SDGs の現状と課題 —徳島市を事例に
 南木曽町田立村における淡水魚養殖業の成立と養殖事業者の職住一体生活の実態とその可能性に関する研究
 滋賀県草津市野路地区における空き家の現状と今後の方策について
 獣害対策としてのジビエ普及における猟師の役割
 虫は日本の食糧を救いうるのか。

卒業後の進路

分析・洞察力や問題解決力が強みになる
人文学科で培われる、文化や社会現象を分析する力や自ら問題を発見し解決する力、グローバルな視点で日本や京都文化を洞察する力は、幅広い分野で応用できます。編集者や学芸員、コンテンツ制作者はもちろん、ITや文化事業、教育産業、商品企画、観光など、今後の日本ビジネスの中心となるあらゆる業種で必要とされるでしょう。

 めざせる職業
編集者、 記者、 公務員、 NPO・NGO 職員、 学芸員、図書館司書、学校教員、 教育機関職員、 企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
出版社、Web コンテンツ制作会社、医療・福祉、観光・サービス業、金融業、NPO・NGO など
 
 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。
 
 高等学校教諭一種免許状(公民)
 中学校教諭一種免許状(社会)
 図書館司書
 博物館学芸員

VOICE

  • 進藤 拓海さん在学生

    生きづらい社会の原因と解決策をさがし、考え続ける

     私が取り組むテーマは、この社会の「生きづらさ」。自分自身も感じてきた問題を、障害者という存在を軸にして学び、考えています。 2016年に神奈川県の津久井やまゆり園という障害者施設で「障害者は不要な存在だ」として入所者が殺害される事件が起きました。犯人の差別意識が原因と報道されましたが、本当にそれだけでしょうか。犯人は施設で働いたことがあり、障害者は身近な存在でした。ネットでは犯人に賛同する声もありました。彼らは何を思っていたのでしょうか。そこには、人間を生産性や「金を稼いでいるかいないか」という価値観でしか見られなくなった生きづらい環境があるように、私には思えます。
    なぜこんな社会になったのか。生きやすく変えるにはどうすればいいのだろう。
     生きづらさについて考える時、とても面白く刺激を受けたのが「ジェンダーと社会」という授業です。哲学の歴史から始まり、最終的には生物学的な男女の区別すら「つくられたもの」だという認識に至る内容で、これまでの世界観を根幹から揺るがされました。今後も自分自身と向き合いながら、社会の問題を考え続けていきたいと思っています。
  • 田村 有香教員

    常識にとらわれず物事の裏側を調べ、地域の未来を描く。

    形が不ぞろい、傷があるなどの理由で出荷されず、畑に捨てられる「規格外」の野菜について研究しています。規格が厳しすぎるからという説がありますが、調べていくと、正しくないことがわかってきました。廃棄野菜の量は3~4割と言われますが、実態は野菜によってずいぶん異なり、実際に計量したデータもないため、調査は新しい発見に満ちています。もう一つのテーマは京北宇津地域で行っている、住民と学生の協働による地域活性化の取り組みです。高齢化と過疎化が進む農村ですが、美しく魅力的で、住民も元気です。地域課題を発見し、解決に向けてともに動き、結果を検証して、また新たな課題を見つける……これを長期間続けています。
    こうした研究を踏まえ、私のゼミでは身近な物事について徹底的に調べる「モノやコトの裏側追跡」、地域に学び未来をデザインする「地域連携」に取り組みます。どちらの研究も「当たり前」や「常識」にとらわれず自由に発想できる人、柔軟に工夫できる人が向いていると思います。常識は一つの「仮説」でしかありません。真実はどこにあるのか突き止める学問上の旅は、とてもエキサイティングです。
  • 山田 創平教員

    いま抱えている「しんどさ」が、社会を変える原動力になる

    表現や芸術を切り口にして、社会的排除や差別といった社会問題を考えていきます。いま、生活のなかで何かの困難や課題、あるいはしんどさを抱えている人に伝えたいのは、その感覚や思いがこれからの社会を変えていく重要な原動力になる、ということ。大学は自分が考えたいことを、時間を気にせずいくらでも考えられる場です。みなさんに社会の問題を「自分のこと」として研究に取り組んでもらいたいと思っています。