芸術学部教員
『ねこのおうち』
私が最近読んで、しみじみと生きていくことの哀しみと温かさを感じた本です。平易な文章ですが、普遍的な内容を含んでいると思いますので、ぜひ読んでみてほしいと思います。動物が好きな人にもそうでない人にも多くの人の心に響くのではないでしょうか?
『ナショナルジオグラフィック日本版』
ナショナルジオグラフィック日本版、月刊紙です。地球上で起きている様々な事象を、美しい写真と共に紹介してくれます。今私たちが知っておくべき事が詰まった本です。月に一度手に取ることをお勧めします。
『既にそこにあるもの』
しばしコンセプトの呪縛から解き放たれて、無性に何か作りたくなる。無目的に拾って来た物に色を塗り、何か無心に切ったり、貼ったりしたくなる。わざと下手くそな絵を描いて、絵なんか上手い必要ないんだ!ガハハッ!俺って天才!なんて言いたくなる。パンク・ロックかなんか聴きながら、どんどん制作に勤しみたくなる。とにかく創作意欲が掻き立てられて、本なんか読んでる場合じゃないと思わせてくれる本。
『ヰタ・マキニカリス』
模型・月・少年愛・A感覚・ヒコーキ・幾何学・弥勒・宇宙的郷愁・地上とは思い出ならずや……、何やら気になるイメージが次々と並ぶ、稲垣足穂の魅力が凝縮された、1948年の中短編集です。絵画・オブジェ・映像的、硬質でドライ、とも評される作品は、今時のアニメっ子やアート野郎にもきっと響くはず。「ヰタ・マキニカリスの理想は、少年少女の結合の上に生れる新文明、コバルト色の虚無主義です」こんなふしぎな言葉たちにピンと来る人は、ぜひ読みましょう!
『男らしさの終焉 The Descent of Man』
多様性、ジェンダー、アイデンティテイ。「理解はするけれど自分には関係ない」と思っていませんか?著者のグレイソン・ペリーは、白人の異性愛者で、家庭を持ち、成功したアーティスト。一方で、女装愛好家でもあり幼い頃からいわゆる男性性に違和感を感じてきたひとり。来るべき未来の男性像を考えることは、この大学にいる多くの女性たちの未来にとっても重要です。本書ではグレイソンのドローイングも多数楽しめます。情報館が使えるようになったら、2007年に私が彼の個展を金沢21世紀美術館で企画した際の図録もぜひ見てください。
デザイン学部教員
『小さな家のローラ』
安野光雅さんの挿絵と、素朴で豊かな暮らしが魅力的な児童文学の一つ。小さい頃に読んだ児童書を、子供の読み聞かせで読み返すことがたくさんありました。大人になってから読む児童文学は、その頃気づけなかった感情や発見がたくさんあり、とてもおもしろい。こんな不安定な時期だからこそ、新しい発見を求めて懐かしい児童書を読み返し、想像力を広げてみませんか。
『カラマーゾフの兄弟』
ロシアの文豪、ドストエフスキー最後の長編小説。続編も構想されていたが、作家の死によって実現されず仕舞い。然りとてこの前編?が面白くないかということは然に非ず、独立した小説なので続編を想像しながら読むのも一考。暗くて重い小説なので、同作家著の『罪と罰』を読んでみて、気に入ったら挑戦されては?デザインには文学も必要です。
『アイデアのつくり方』
デザイン分野では定番とも言える本です。ほぼ毎年、1年生の授業で紹介してきました。 帯に「60分で読めるけれど、一生あなたを離さない本」とありますが、私にとっては、そのコピーに偽りはなく、何かのアイデアを出すときやビジュアルイメージを作る時には、いつもこの本に書かれていたことを思い出しながら進めています。 書かれていることは、要素を組み合わせることで新しいアイデアを出せるようになる。ただそれだけなんですが、そこにはセオリーがあります。 感覚だけで進めがちなアイデアを出すという行為を、この本を読むと段階を追って明確に進めていくことができるようになります。 1度読むと、アイデアを出す原理が理解できるようになるので、デザイン学部の皆さんにぜひ読んで制作に役立ててほしいと思います。
『陰翳礼賛』
『宇宙船地球号 操縦マニュアル』
「宇宙船地球号」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれない。著者は現代のレオナルド・ダ・ヴィンチと称されたフラーである。いまから半世紀も前に書かれた著作ではあるが、エコロジーが当たり前に謳われる今の時代にも接続可能な言葉と思想に溢れている。専門分化に向かうベクトルから逃れ、あらゆる分野に目を向ける包含的な思考の重要性に触れ、地球全体を意識するような視点を意識するきっかけにしてもらいたい。
『世界の街』
イラストレーター小林泰彦によるスケッチイラストが満載です。 1967〜71年、ベトナム戦争に揺れ動くアメリカを中心に、ヒッピー、バックパッカー文化からヨーロッパの先端ファッションまで、世界の街と若者文化を取材し、当時の日本の若者たちに大きな影響を与えた人気ルポの傑作選、今読んでもおもしろい。
『百年の孤独』
マコンドという町を中心に、ブエンディーア族を巡ってひき起こされる魔術的なリアリズム。ガブリエル・ガルシア=マルケスの世界を、自分なりに豊かな想像力を膨らませることができる一冊です。
『気になるモノを描いて楽しむ 観察スケッチ』
我々インダストリアルデザイナーにとって、観察眼はそのデザイナーの資質を表すものと言っても過言ではありません。日ごろ何気なく接している生活用具、自然界にある動植物などなど、いつもよりもグッと深い深度でそれを見て行く事で大きな発見や革新に繋がって行きます。この書籍ではデザインの現場で言語として用いるデザインスケッチの書き方から、物をじっくり観察してそれをスケッチとして記録.表現する手法が大変わかりやすく解説されており、読み物としても楽しく読んでもらえると思います。
『独学のすすめ』
高校時代、「学ぶ」ということの本質を教わった本です。当時、本題の「独学のすすめ」とは裏腹に、より大学で学びたいという意志に駆られました。意欲の問題、読書について、「しごと」の意味、創造性というもの、「専門」とはなにか、学校の意味など、全てが、普段の暮らしのなかで、本題の“独学のすすめ”が、どのようなことにも通底する本質であることが、グッと入ってくる感覚があります。今でも読み見返すと何か背中を後押ししてくれる“友”本です。
マンガ学部教員
『作画汗まみれ』
高畑勲、宮崎駿と共に青春時代を過ごした職人的アニメーター大塚康生。『太陽の王子ホルスの大冒険』等で高畑、宮崎らと過ごした熱き日々、アニメ日本を黎明期から支えた氏が語る傑作アニメ誕生の舞台裏。『ルパン三世・カリオストロの城』など数々の傑作アニメを作ってきたベテランアニメーターによる貴重な証言録です。
『いつもレコードのことばかり考えている人のために。 』
『エレンディラ』
ガルシア・マルケスの短編集です。この中の「失われた時の海」という作品を特に気に入っていて何度も読み返しています。取り扱いの難しい「香り」を見事に表現し、五感に訴えかけてくる不思議な物語です。キャラクターをデザインする者にとって、この世界観はとても参考になり刺激的ではないでしょうか。
『ひらめき教室−「弱者」のための仕事論−』
『暗殺教室』作者の松井優征と世界的デザイナーである佐藤ナオキの対談集。謎のベールに包まれているようなアイディアの産み出し方、その発展の仕方が、自身の仕事を通して具体的にシンプルな論理で紹介されている。方法論を身に付けたい人へオススメします。
『TIMELINE タイムライン—地球の歴史をめぐる旅へ!』
「地球の歴史をめぐる旅へ!」と銘打たれた絵本。風に乗って旅しているような感覚でついつい頁をめくってしまいます。モノトーン基調のユニークな絵柄で描かれる内容は必見です。
「流血鬼」(『藤子・F・不二雄SF短編集』に収録の短編作品)
表題の吸血鬼ならぬ「流血鬼」とは何者か。感染症が蔓延した果てにたどり着く人間とは、世界とは。読後、あなたの価値観は大きく揺さぶられるはず。「ドラえもん」をはじめ子供向けマンガの第一人者・藤子F先生による、大人向け異色短編作品。1978年の発表時から30年以上経つ今でもまったく色褪せない。『SF短編集』の全集版や文庫版で入手可能だが、複数巻あるので収録先にはご注意を。もちろん、どの巻をとってもハズレは無いけれど。
ポピュラーカルチャー学部教員
『鴨川ホルモー』
この小説、正直に言うと、はじめバカにしていた。表紙の絵が変だし、「ホルモー」という意味不明の単語も「何?」と思った。ただ、京都を舞台にしている小説を読む、というミッションを課しているので、文庫になってから仕方なく買って読みはじめた。驚いた。出だしからぐっと引き込まれ、一気に読了した。感想は、相当面白い、というもの。15年前の作品だけど、そこで動いている大学生は、僕が大学生のころや、いまとも通じている。舞台の京都にも変化はあるが、大枠は同じ。21世紀の京都「青春」小説のスタートであり、ベストスリーに入る傑作。幻想的であるけど、リアルで明るい。
人文学部教員
『子どもたちの生きるアフリカ~ 伝統と開発がせめぎあう大地で~』
みなさんは「アフリカの子どもたち」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。本書を手にとってみたら、アフリカの今を生きる子どもたちの生き生きとした姿に出会えるはずだ。サバンナ、熱帯雨林、乾燥地帯、水辺、そして大都市…子どもたちが暮らす環境も、国や地域によって様々だ。バラエティに飛んだ風土と変化していく社会の中で、元気に学び、遊び、そして働く子どもたちの様子を通し、アフリカの多様な文化や社会についても学ぶことができる入門書。
『出口なお——女性教祖と救済思想』
明治後期に創始され、大正期に急成長した民衆宗教・大本教の開祖である出口なおの評伝である。最底辺に生きる一庶民に過ぎなかったなお が、晩年、神憑ることによって民衆の意識を代弁し、「近代」という理念を真っ向から否定する様が描かれている。なお の生涯を追体験することで、私たちは民衆生活と日本資本主義の関係を残酷なまでに思い知らされる。新刊は品切れのようだが、今こそ古書を探してでも読むべき1冊である。
『公共性(思考のフロンティア)』
『平安文学でわかる恋の法則』
告白したいけれど、断られたらどうしよう……。今も昔も人の悩みは同じ。相手の気を引くためにあれこれ策を練り、言葉を選んで気持ちを伝え、なんとか恋を実らせようとする。でも、今より少し守らなければならないルールが多い。現代のように直接対面することができないからこそできたお約束。それがわかれば、ちんぷんかんぷんだった古典がちょっと楽しくなります。
『秋萩の散る』
古代の疫病流行を描いた長編小説『火定』でも注目されている澤田瞳子さんの短編集。奈良時代を描く小説は少ないのですが、澤田さんは本格的な歴史資料を読み込んだ上でフィクションが書ける稀有の人材。特に、大学寮で学ぶ学生たちが主人公の物語は同世代の若者におすすめ。時代を超えて生き生きと迫る青春群像を描きつつ、「学問を学ぶ意義とは何か」という、現代にも重く突きささる問いを突きつけます。
『方丈記』
国語の教科書でおなじみの本作は文学作品として有名ですが、1180年前後の京都を舞台としたドキュメンタリーです。当時、都で起こった大火事、竜巻、飢饉、地震などの災害が記されているのです。現代の新型コロナウィルスの状況下、“方丈”の精神から学ぶことがあるかもしれません。ネット(青空文庫)の無料テキストもありますが、高橋源一郎による新訳(『日本文学全集』07)にチャレンジしても良いでしょう。
『罪と罰』
あなたの好きな人とそっくりな人物が出てくると思います。ひょっとすると今のあなたにそっくりな人も・・・。
『感染症と文明』
まさにいま読むべき本です。「大変な例外的事態だ」と私たちは思いがちですが、そんなことは全然ないのだとわかります。どっしり構えましょう。
感染症の流行に対して、歴史的に見て、その時々の社会はどのように対応してきたのか。特に近代以後の医学と社会はどのように対応してきたのか。感染症の医学の専門家が歴史的に振り返った本です。
感染症の流行に対して、歴史的に見て、その時々の社会はどのように対応してきたのか。特に近代以後の医学と社会はどのように対応してきたのか。感染症の医学の専門家が歴史的に振り返った本です。
『首里城への坂——鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像』
すぐれた芸術家でありながら、また、研究者として、琉球文化に関する貴重で膨大な記録を残した鎌倉芳太郎の生涯を描いたノンフィクションです。王都首里を歩くさいは、ぜひポケットに入れておきたいものです。私は、次の大河ドラマの原作にならないかなと、ひそかに期待しています。
『Go to Togo 一着の服を旅してつくる』
大学時代に1年間休学して西アフリカのトーゴ共和国を訪問したことから、著者の人生は大きく動く。その時にトーゴの友人と交わした「みんなが笑って過ごせる世界を作りたい」という約束を果たすため、トーゴと京都の伝統的な技をつなぐ会社を立ち上げ、地球上を駆け巡り精力的に仕事を作り出している。著者と一緒に喜び、悩み、涙を流し、ともにフィールドワークに出ているようなわくわくした気分で読み進められる本。身近なところからの工夫や行動こそが、世界につながっていくと実感させられる。
『日本文化のキーワード〜七つのやまと言』
よく耳にする「わび」「あはれ」「間(ま)」などの古い日本語を取り上げて、日本文化の特徴について掘り下げた名著。
『モナドロジー』
短い文章ながら、もっぱらメディアを介してのみ他人と関わり、しかし極めて集合性の高い社会を作り出している現代の個人のありかたについてたくさんの示唆に富んでいる世界観が披瀝されているように思われます。
『自分の中に毒を持て~あなたは"常識人間"を捨てられるか~』
1970年、大阪万博の際に活躍した芸術家に岡本太郎がいます。氏は人文・社会科学にも精通され、その学びをベースに後世に残る岡本芸術を切り拓きました。 「挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とでは全く天地の隔たりがある。挑戦した不成功者には、再挑戦としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままでオリてしまったやつには新しい人生などない。ただただ成り行きにまかせて虚しい生涯を送るに違いないだろう。」私は皆さんと同じ学生時代に同書を読み触発されました。本学は芸術も人文学も学べる環境にあります。ぜひ何かに挑戦してみてください。
『君たちはどう生きるか』
主人公は15歳のコペル君。友人や家族と過ごす日常から、自分と社会の関係、他者との関係の築き方、そして自分との向き合い方を学びます。この物語が最初に刊行されたのは1937年、日中戦争が始まった年です。当時の日本は軍国主義化が進み、自由な思想や表現が厳しく制限されていました。こうした時勢のなかでも、子どもたちには他者や異文化を尊重する、人間性の豊かな大人に育ってほしいという願いを込めて、この物語は執筆されました。時代背景は異なりますが、現代の私たちにとっても、社会に生きる人間として大切なことに気付かされる一冊です。
共通教育教員
『じぶんを切りひらくアート ー違和感がかたちになるときー』
キュレーターである著者が、高嶺格、志賀理江子、下道基行など現代アートシーンで活躍する8人のアーティストに行ったインタビュー集。 彼/彼女らが社会の制度や常識などに感じた違和感に向き合いながら、どのような行動力で自分の表現の場を開拓し、アーティストになっていったのか。それぞれが等身大の言葉で語るさまに共感したり、アーティストの存在を身近に感じられると思います。
『白百』
装丁に惹かれて手に取ったときの風合い、紙とインクの微香、レジで差し出すときの含羞、頁をめくるときめき、しおりを挟むときのため息、読書とはそんな感覚がゆらめく体験の総体をいう。白をテーマにした1,200字、100編のコラムは、そんな読書の魅力を実感させてくれる。「日本人が米を育んだのではない。米の中に日本人というものが育まれたのである。」046「米」の冒頭部である。読まなくても傍らに置いておきたくなる一冊である。
『経済政策で人は死ぬか?公衆衛生学から見た不況対策』
『Pedagogy of the Oppressed』
この本を読むと、なぜ、どんな人の知恵や知識も同じように重要であるのかが分かってきます。
『錦とボロの話』
昭和初期、正倉院に眠る古代裂の復元に挑んだ京都の美術織物作家の実話です。古代裂とは、古代中国で織られた美しい織物のこと。海を渡り、日本の宝物として大切にされてきました。日本の織物はこの古代裂をお手本にして発展してきたのです。しかし、正倉院の古代裂がどのよう技術で織られたかはまったく伝わっていませんでした。1000年以上前に織られた絹織物の断片は時間とともに朽ちていきます。古代裂が織られた当時の姿に、当時と同じ技術で復元することは不可能だと考えられていました。この本には、そんな不可能に挑んだ織物作家や職人さんたちの物語が綴られています。考古や歴史、工芸、美術、文化。さまざまな要素が楽しめます。