著しい経済成長を遂げ、急速に都市化が進んだアフリカは世界から熱い注目を集め、わが国でも多数の企業が進出を始めています。また、ビジネスによる雇用創出など、新しい形の開発援助も展開するようになりました。そんな今のアフリカに潜在するビジネスチャンスとは具体的には何を指すのか。また、アフリカでは現在どんなことが起き、何が求められているのか。
2018年4月、日本で唯一のアフリカ出身学長となった京都精華大学学長のウスビ・サコがコーディネーターを務め、最前線の研究者を招いて全5回の連続講座を東京丸の内でスタートします。アフリカにおける文化、経済、生活などさまざまな話題をビジネスとの関わりから読み解きます。
「京都精華大学 現代アフリカ講座 -現代アフリカのパワーと可能性を知る ビジネスの視点から-」
8月3日(金) 第1回 (導入)現代アフリカをどう見るか
8月10日(金)第2回 香港に乗り出したタンザニア人商人による「シェアリング」経済
9月28日(金)第3回 伝統文化と現代文化、どちらが強い?:グリオの誉め歌から見えてくるもの
10月26日(金)第4回 アフリカ経済をどう理解すればよいか、日本はどう向き合うべきか
11月30日(金)第5回 (まとめ)大学から提案する現代アフリカの、その先
会場:京都アカデミアフォーラムin丸の内 / 時間:19:00~20:45
定員:各回50名 / 受講料:10,000円/1回聴講は2,500円
申込み・問合せ先:京都精華大学 社会連携センター
Tel:075-702-5263/Fax:075-722-5440/E-mail:kcrelab@kyoto-seika.ac.jp
第1回 (導入)現代アフリカをどう見るか
ウスビ・サコ(京都精華大学学長/同人文学部教授/コミュニティ論・建築計画)
澤田昌人(京都精華大学人文学部教授/文化人類学、アフリカ地域研究)
アフリカの「伝え方」や「伝わり方」は長年議論の対象でした。日本国内に伝わる情報には、誤解を招くようなものも少なくありません。データを重視しがちな日本がアフリカとのつき合い方に迷ってきた経緯もあるでしょう。この講座ではデータだけでは見えない現代アフリカの姿を伝えたいと考えています。第1回はその基礎となる現代アフリカの読み解き方を教えます。今アフリカが秘める、さまざまなポテンシャルを一緒に考えていきましょう。
ウスビ・サコ
マリ出身。北京語言大学、南京東南大学等を経て、京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。研究対象は「居住空間」「京都の町家再生」「コミュニティ再生」「西アフリカの世界文化遺産(都市と建築)の保存・改修」など、社会と建築空間の関係性を様々な角度から調査研究を進めている。著書に『知のリテラシー・文化』(共編、ナカニシヤ出版、2007年)、論文に「バマコの集合居住の生成と中庭型在来住宅の形成過程の考察」など。
澤田昌人(さわだ・まさと)
京都大学理学研究科博士後期課程修了。理学博士。山口大学教育学部講師を経て、本学に赴任。アフリカ熱帯雨林に住む狩猟採集民、農耕民の世界観についての研究、および中部アフリカの現代史に関する研究を行っている。「世界観の植民地化と人類学——コンゴ民主共和国、ムブティ・ピグミーにおける創造神と死者」、「コンゴ戦争の和平交渉における停滞と他国からの政治的影響」などの論文がある。
第2回 香港に乗り出したタンザニア人商人による「シェアリング」経済
小川さやか(立命館大学先端総合学術研究科准教授/文化人類学、アフリカ地域研究)
21世紀に入り、香港や中国南部にコピーやニセモノをふくむ様々な商品を買い付けに乗り出したアフリカ人交易人たち。その中には香港に留まり、情報通信技術(ICT)や電子マネーを駆使したユニークな交易システムを形成するアフリカ人たちもいます。本講義では、香港在住のタンザニア人ブローカーたちによる中古車交易の仕組みと彼らが香港で結成した組合活動を事例に、日本でも「来るべき経済」として注目されつつあるシェアリング経済やフリー経済と連動するインフォーマル経済のダイナミズムについて明らかにします。
小川さやか(おがわ・さやか)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科単位認定退学。博士(地域研究)。日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員、同センター助教を経て、現職。主な業績。『都市を生きぬくための狡知─タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(世界思想社、2011年。第33回サントリー学芸賞受賞)、『「その日暮らし」の人類学—もう一つの資本主義経済』(光文社新書、2016年)。
第3回 伝統文化と現代文化、どちらが強い?:グリオの誉め歌から見えてくるもの
鈴木裕之(国士館大学法学部現代ビジネス法学科教授/文化人類学、アフリカ音楽研究)
西アフリカに広く居住する「マンデ」と総称される人びと。13世紀に伝説的英雄スンジャタ・ケイタによって建国されたマリ帝国の系譜を引く諸民族です。マンデ社会には「グリオ」と呼ばれる語り部がおり、スンジャタ叙事詩を木琴やコラ(ハープ=リュート)に合わせて語り歌い継いできました。グリオはその音楽的技能ゆえに、ポップスのレベルでも活躍し、モリ・カンテなど多くの優秀なスター歌手やミュージシャンを輩出しています。アフリカの音楽文化において、いわゆる伝統的要素とショウ・ビジネスに包摂される近代的要素と、どちらが強いのか、あるいは本質的なのか、グリオの唱法「誉め歌」に注目して考えてみたいと思います。
鈴木裕之(すずき・ひろゆき)
慶應義塾大学大学院社会学研究科満期退学。文化人類学専攻。アフリカの音楽文化・都市文化および文学が専門。コートジボワールの大都市アビジャンにおけるストリート音楽(レゲエ、ラップ)、西アフリカに広く居住するマンデ民族の語り部「グリオ」、パリにおけるワールドミュージックなどを研究。妻はアフリカ人歌手のニャマ・カンテ。
主著:『ストリートの歌:現代アフリカの若者文化』(世界思想社、2000年)、『恋する文化人類学者:結婚を通して異文化を理解する』(世界思想社、2015年)、『アフリカン・ポップス!:文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(共編、明石書店、2015年)
第4回 アフリカ経済をどう理解すればよいか、日本はどう向き合うべきか ※予定
平野克己(日本貿易振興機構アジア経済研究所理事/アフリカ地域研究、開発経済学)
かつては貧困の巣窟地と言われ、現在は未来の成長市場とも称せられるアフリカ大陸。多くの国に分かれ、明暗織り交ざるアフリカ経済を総体的かつ包括的に理解するための視点とは? また、そのアフリカに日本は、日本企業はどのように向き合っていけばよいのか? いまやアフリカ最大の貿易相手国となった中国を参照しながら、このような問題意識に沿って解説を試みます。
平野克己(ひらのかつみ)
1956年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済学研究科修了、同志社大学より博士(グローバル・スタディーズ)。外務省専門調査員(在ジンバブエ日本国大使館)、笹川平和財団を経て1991年にアジア経済研究所。ウィットウォータースランド大学(南アフリカ)客員研究員、ジェトロ・ヨハネスブルグセンター所長、地域研究センター長等を経て2015年より現職。主な著作に『経済大陸アフリカ』(中公新書、2013年)、『アフリカ問題:開発と援助の世界史』(日本評論社、2009年)、『図説アフリカ経済』(日本評論社、2002年、国際開発大来賞)。
第5回 (まとめ)大学から提案する現代アフリカの、その先
ウスビ・サコ×ゲスト講師(予定)
最終回は具体的な取り組みについて考えます。また、京都精華大学の教育研究対象でもある、文化的コンテンツの活用可能性についてもお話ししたいと思います。マンガ、大衆音楽、ダンス、ファッション、建築などのコンテンツはアフリカでも同時代的に対象化されているものが多くあります。これらを研究することで、今まで我々が追ってきたハード面のアフリカではない「ソフト面の現代アフリカ」が見え、ビジネスの可能性も探ることができるのではないでしょうか。
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