デジタル作画は、アニメーターの「新たな画材」になるか? スタジオコロリドによる「デジタル作画講座」レポート (2/2)

MANGA

デジタル作画は「新たな画材」になるか?

作業開始直後は、はじめて触れるツールの感覚にとまどう学生の姿も。
進行 学生のなかには「デジタル」と聞いて、苦手意識を感じたり、不安になったりする人もいると思うのですが、その点はどうでしょう?

間崎 デジタル作画といっても、重要なことはアナログでの作業と変わらず、画力や発想力なんです。なので「デジタル」という言葉だけをすくい上げて、あきらめてしまうのはもったいないですね。

進行 なるほど。そもそも画力として遠近法が狂っていたり、動きに抑揚がなかったりするものについては、たしかに違和感を覚えましたね。

間崎 そうなんです。デジタル画面は、アナログで描くよりも線がシンプルになるので、むしろごまかしが効きづらいんです。そこで必要になるのは、きちんと描ける力です。
「デジタル作画では、アナログよりもシビアに画力が求められる」と話す間崎さん。
進行 デジタル化と聞くと、どうも魔法の言葉のように聞こえますが、基礎的な能力の積み重ねが大切なのですね。

栗崎 はい。動画のスキャンや、ゴミ取りといった、手書きなら手間を要したはずの作業を、デジタルは大幅に省いてくれます。けれど、画力や考える力が根本にあるという意味では、手書きアニメもデジタルアニメも変わらないんです。

間崎 デジタル作画もひとつの「手段」ですから「画材」に過ぎません。ただ、省くことができた時間を有効に使って、より作画に費やすことができます。「もっとカメラワークにこだわりたい」とか「さらに細かなディテールまで描きたい」といった想いを叶えることができます。

進行 デジタル作画によって、アニメ作品の質を上げることができると?

間崎 デジタルでより表現できるものがあると思います。アニメーションは映像表現ですから、描いたものが動き、どのような印象を与えるのか、トライアンドエラーを何度もできることがデジタル作画の利点です。より動かすことが、より強いアニメーターを育てると、僕は思っていますね。
学生の作品を見せながら、問題点と改善点を丁寧に解説していくお二人。

デジタルの作業行程を確立したい

進行 表現の向上や作業の効率化、ひいてはアニメーターの待遇改善……数多くのメリットがあるわけですが、現在、アニメ業界のデジタル作画への移行率は、どれくらいなのでしょうか?

栗崎 じつはまだ全体の1割ぐらいだといわれています。業界を長く支えてきたアニメーターの方がアナログでの制作環境に慣れてしまっていたり、デジタル化のための設備投資にコストがかかったりもするので。
いまやコロリドのデジタル作画マネージャーを務める栗崎さんも、コロリド入社時はデジタルの経験はなく、石田祐康監督からペンタブの使い方を学んだという。
間崎 ただ、僕たちは業界全体が過渡期であることを自覚していて、この4~5年のうちにデジタルツールでの制作工程がある程度確立できると考えています。アニメ制作関係者の多くが「なんとかしなければいけない」と感じていますから。

進行 なるほど。これからのアニメ業界を背負っていく若い人たちにとってみれば、デジタル作画のスキルは、遅かれ早かれ必要になりそうですね。

間崎 そうですね。コロリドの社員も平均年齢20代半ばの若いメンバーです。デジタル作画を習得することで、若い人に多くのチャンスがまわってくると思います。ただ、ベテランや先輩がいない状況ですから、10年も前に先輩方がつまずいたことを自分たちが同じように繰り返している可能性もあります。今後、人材の育成方法を確立していくことが、業界全体にとって大切だと感じています。

進行 最後に、デジタル作画における今後の展望を教えてください。

栗崎 コロリドの最終目標はオールデジタル化です。しかし、デジタル化が進んでも、アニメ制作が集団作業であることに変わりはありません。より良い作品をつくりたいという思いや、より効率良く制作できるよう知識やノウハウを、チームと共有することが大切になります。作画のテクニックだけではなく、アニメーションの原点ともいえるコミュニケーションの大切さも伝えていきたいですね。
コロリドの企業理念は「アニメに関わる人が安心して働き続けることができる場を作る」。デジタル制作のワークフローを企業秘密にせず、広く共有している。
間崎 〈描く、結果を動きで見る、更に良くする〉を容易に行えることが、デジタルの魅力だと思っています。学生さんにもそれが伝えられるような授業にしていきたいと考えています。

進行 本日はどうもありがとうございました。