
芸術学部映像コース卒業生の中村朱里さんが夫婦で活動している「こばやしとなかむら」が制作したドキュメンタリー映画『村で生きる』が、農政ジャーナリストの会が主催の「第40回農業ジャーナリスト賞」にて農業ジャーナリスト賞に輝きました。おめでとうございます!
この賞は、農業関係の報道や出版に携わるジャーナリスト、研究者などで構成されている自主組織・農政ジャーナリストの会が行う、前年1月から12月の1年間に発表された農林水産業、食料問題ならびに農山漁村の地域問題などに関するジャーナリストの優れた功績をあげた団体・人物に対して贈与されるものです。40回目となる今回は新聞や書籍、映像部門から計25点もの応募があり、選考委員会の厳選なる審議を経て、農業ジャーナリスト賞4点、奨励賞2点、特別賞1点が選ばれました。
受賞作品『村で生きる』は、熊本・阿蘇にある産山で、霜降り肉が評価される今の時代に逆⾏しながら、草資源を活かす阿蘇伝統の希少な「あか⽜」飼育にこだわり、村の草原を守る地域循環型の畜産に挑戦を続ける親⼦の⽇常を追ったドキュメンタリー映画です。⾜掛け4年の歳⽉をかけて完成した、⽜飼いの⽣き様、農村の現実にまで迫る作品となっています。
「こばやしとなかむら」が運営するYouTubeチャンネルでは、同作品の予告編や映画では未公開だったシーンがオムニバス形式で公開されています。ぜひご覧ください。
農業ジャーナリスト賞 受賞作品『村で生きる』(102分)
監督・撮影・編集:小林 瞬、中村朱里(こばやしとなかむら)
草原が幾重にも重なり、野焼きを終えて芽吹いたばかりの草を、⾚褐⾊の⽜たちがのんびりと⾷む。
ここは雄⼤な阿蘇連⼭を南に望む——熊本・産⼭村。信号機もコンビニもない⼩さな村に“あか⽜の神様”と呼ばれ、全国の名だたる料理⼈から注⽂が絶えない⽜飼いがいる。
草原が幾重にも重なり、野焼きを終えて芽吹いたばかりの草を、⾚褐⾊の⽜たちがのんびりと⾷む。
ここは雄⼤な阿蘇連⼭を南に望む——熊本・産⼭村。信号機もコンビニもない⼩さな村に“あか⽜の神様”と呼ばれ、全国の名だたる料理⼈から注⽂が絶えない⽜飼いがいる。
「⾚⾝が広まっていけば阿蘇の草原と共にある“あか⽜”が存続する可能性はある...まあ夢物語かな」
そう少し寂しそうに笑うのは、あか⽜⼀筋に育ててきた井信⾏さん(86)。
そう少し寂しそうに笑うのは、あか⽜⼀筋に育ててきた井信⾏さん(86)。
結核を患う⽗に代わり家計を⽀えるため中学卒業と同時に就農し、以来70年。
輸⼊飼料に頼り霜降り⾁を⽬指す今の時代と逆⾏するように「草⾷動物は草で育てるのが本来の姿」と阿蘇の草資源を⽣かし、⽜と⼈と草原がつながる循環の形を守り続けてきた。
しかし、年々あか⽜は減り、村は荒れ、2019年には“がまだしもん”だった妻を亡くし、⾃らの衰えも感じ始めている。変わらぬ村への想いを抱く⽗と、偉⼤な背中を⾒続けてきた息⼦。
その⽇々を⾒つめた、ある初夏の記録。
受賞理由
阿蘇の雄⼤な草原が広がる熊本県産⼭(うぶやま)村で、⿊⽑和⽜の霜降り⾁が評価される今の時代に逆⾏しながら、草資源を活かす阿蘇伝統の希少な「あか⽜」飼育にこだわり、阿蘇の草原を守り地域循環型の畜産に挑戦を続ける親⼦の⽇常を追ったドキュメンタリー。2021 年からの下⾒取材と1か⽉間の密着取材で、⾜掛け4年の歳⽉をかけて完成した⼒作。⽗親、息⼦、息⼦の妻の会話を通じて、現在の⽜⾁流通や消費者嗜好などが⽣産現場に及ぼしている⽭盾をあぶり出し、明確な問題提起とメッセージが感じられる。同時に、草資源の維持、⾷⽣活、⾷と農の距離の問題が透けて⾒え、単なる畜産の物語ではなく、⽜飼いの⽣き様、農村の現実にまで迫る作品になっている。美しい映像も⽬に焼き付く。Director's Profile
⼩林瞬・中村朱⾥の夫婦で監督・撮影・編集を共同で⼿がける。出版不況に揺れる製本会社の家族、光の当たらない⽜を扱う⼥性⽜肉卸、⽶離れに悩む⽼舗⽶屋、能登震災からの復興を⽀える展⽰会ブースデザイナーまで、テレビで描けないものはwebで、それでも描けないものは⾃主制作で記録してきた。短編「村で⽣きる」が札幌短編国際映画祭にて上映。テレビマンユニオン出⾝。Yahoo!ニュース エキスパート所属クリエイター。
● 小林瞬
東京生まれ。法政大学キャリアデザイン学部卒業。劇団黒テントで物語の面白さに惹かれる。
伊丹十三作品に衝撃を受けテレビマンユニオンに参加。NHK『サラメシ』では多様な職業人や経営者を取材し、働く人々の日常を映し出してきた。
● 中村朱⾥
⼤阪⽣まれ。京都精華⼤学芸術学部メディア造形学科映像コース卒業。
ドイツ・カッセル⼤学に留学し、Bjørn MELHUSらに師事。映像表現とドキュメンタリーを学ぶ。
卒業後、テレビマンユニオンに参加。テレビ朝⽇『⾷彩の王国』では、農業・漁業・畜産など“⾷”や“⾵⼟”をテーマに全国各地を取材。⽣産者や料理⼈たちの営みと苦悩に⽿を傾けてきた。
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