京都精華大学では、昨年度に引き続き、マイノリティの権利、特にSOGIをはじめとした〈性の多様性〉に関する知識と、それらを踏まえた表現倫理のリテラシーを備えたアートマネジメント人材を育成するプログラム「#わたしが好きになる人は / #The_people_I_love_are」(※)を、2022年8月より開講しています。
2月には、ネオコロニアリズムや女性への暴力等をテーマとする作品『ホルムアルデヒド・トリップ』のオンライン上映と、作品の背景にふれるレクチャーを行います。
『ホルムアルデヒド・トリップ』を発表し、現在メキシコを拠点に活動するナオミ・リンコン・ガヤルド氏は、自身のことを「グローバル・サウス出身の、有色のクィア、脱植民地のフェミニスト、ビジュアルアーティスト、抜け目のない研究者」と語ります。その作品は、人種・民族・ジェンダー・セクシュアリティ・階級といった様々な権力関係の交差によって強いられた個人や集団への抑圧に、多様な性やジェンダー表現、喜び、憤り、祝福をもって対抗し、それを別のかたちの世界へと転換する欲望と活力を煽っています。
本作の背景にふれるレクチャーシリーズでは、同志社大学大学院教員の菅野優香氏と大阪大学 CO デザインセンター教員のほんまなほ氏を講師としてお招きし、クィア・オブ・カラー批評や、チカーナ・フェミニスト詩人のグロリア・アンサルドゥーアの思想についてお話いただきます。ぜひご視聴ください。
この講座にご参加いただくには、事前のお申し込みが必要です。詳細は公式サイトよりご確認ください。
京都精華大学「#わたしが好きになる人は/ #The_people_I_love_are」プログラム7「レクチャー+『ホルムアルデヒド・トリップ』上映会」
日程:2023年2月17日(金)
時間:18:30~22:00
● 第1部 レクチャー1.2. 18:30~20:50
● 第2部 作品上映 21:00~22:00
会場:YouTubeでのライブストリーミング配信
※レクチャー2は、Zoom参加か、YouTubeでの視聴か、どちらかを選択できます。
※ZoomのURLは、お申し込みいただいた方に後日お知らせします。
申込:事前のお申し込みが必要です。公式サイトのお申し込みページ(Peatixサイト)よりご確認ください。
申込締切:2月15日(水)
定員:100名程度(先着順)
料金:無料
(※)タイトル「#わたしが好きになる人は/ #The_people_I_love_are」は、国籍、性別、世代、セクシュアリティ、社会的な属性によって隔てられずに、自分が好きになる人について語り合える場を作り、発信するためのハッシュタグです。3年間をかけて段階的にプログラムを発展させ、コンセプトを共有する国内外のコミュニティとの連帯を育みながら、2023年9月、誰もが自分らしく生きる多様な社会の実現やジェンダー平等を目指す複合イベント「プライド・アートプログラム(仮称)」の開催を目指します。
(『令和4年度文化庁大学における文化芸術推進事業』採択事業)
プログラム内容
第1部 レクチャー 18:30~20:50
● 1.「サバイバルの戦略 —クィア・オブ・カラーとパフォーマンス」
講師:菅野優香(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員)
講師:菅野優香(同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員)
「クィア・オブ・カラー批評」は直訳すれば「有色(人種)のクィア批評」であり、クィア理論において、人種・ジェンダー・セクシュアリティ・階級が交差する様を探り、またその交差が国民国家の形成やイデオロギー、資本主義とどう関係するかを探求してきた分野です。
本レクチャーでは、キューバのクィア理論家ホセ・エステバン・ムニョスが唱えた「非同一化」——誰かや何かと「同じ」であろうとする同一化(アイデンティフィケーション)という行為に対してそれを拒むこと——の概念をベースに、有色のクィアによる映像やパフォーマンスについてお話しいただきます。
● 2.「ことばに、ふれる、グロリア・アンサルドゥーア」
講師:ほんまなほ氏(大阪大学 CO デザインセンター教授)
自らをテキサス生まれのチカーナ(メキシコ系アメリカ人)・レズビアン・フェミニスト詩人・作家・文化批評家であると規定するグロリア・アンサルドゥーアは、1980 年代に詩やエッセイ等の執筆や編纂を通じて、「白い」フェミニズムによって追いやられていた人種・民族・階級・セクシュアリティをめぐるマイノリティのフェミニズムを開拓しました。
講師:ほんまなほ氏(大阪大学 CO デザインセンター教授)
自らをテキサス生まれのチカーナ(メキシコ系アメリカ人)・レズビアン・フェミニスト詩人・作家・文化批評家であると規定するグロリア・アンサルドゥーアは、1980 年代に詩やエッセイ等の執筆や編纂を通じて、「白い」フェミニズムによって追いやられていた人種・民族・階級・セクシュアリティをめぐるマイノリティのフェミニズムを開拓しました。
本レクチャーの前半は講義形式で行い、後半はアンサルドゥーアの原文と翻訳を対照させながら、Zoomでの参加者に声に出して読んだり感想を交換していただく予定です。
※YouTube参加の方も、コメント欄を使用して感想を交換します。
※申込時に、Zoom参加かYouTubeでの視聴か、どちらかを選択できます。
第2部 作品上映 21:00〜22:00
● 作品『ホルムアルデヒド・トリップ』
ナオミ・リンコン・ガヤルド氏
先住民の土地や女性の権利を守るために活動し、2010年に殺害されたベティ・カリーニョが復活し、メソアメリカの神々や魔女、動物等の仲間と黄泉の国を旅する物語。新大陸で発見され、ホルマリン液で保存されたアホロートルが語り部となる。2017年にサンフランシスコ近代美術館との共同プログラムにより、映像+ライブパフォーマンスの形式で発表された。(字幕:日本語・英語/オーディオ言語:スペイン語・英語・ドイツ語)
ナオミ・リンコン・ガヤルド氏
先住民の土地や女性の権利を守るために活動し、2010年に殺害されたベティ・カリーニョが復活し、メソアメリカの神々や魔女、動物等の仲間と黄泉の国を旅する物語。新大陸で発見され、ホルマリン液で保存されたアホロートルが語り部となる。2017年にサンフランシスコ近代美術館との共同プログラムにより、映像+ライブパフォーマンスの形式で発表された。(字幕:日本語・英語/オーディオ言語:スペイン語・英語・ドイツ語)
※冒頭15分程度、本作について、菅野優香氏とほんまなほ氏によるクロストークを行います。
プロフィール
菅野優香(かんの ゆうか)
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員、フェミニスト・ジェンダー・セクシュアリティ研究センター員。専門は、視覚文化、クィア理論・批評。カリフォルニア大学アーヴァイン校Ph.D.(ヴィジュアル・スタディーズ)。著書に『クィア・シネマ・スタディーズ』(編著、晃洋書房、2021年)など多数。
ほんまなほ
大阪大学COデザインセンター教授。臨床哲学を専門に、哲学プラクティス、対話、こどもの哲学、フェミニズム哲学、多様なひとびとが参加する身体・音楽表現についての教育研究を行う。著書に『ドキュメント臨床哲学』、『哲学カフェのつくりかた』『こどものてつがく』(共編著)ほか、『アートミーツケア叢書』監修。
ナオミ・リンコン・ガヤルド(Naomi Rincón-Gallardo)
1979年生まれ。メキシコシティとオアハカを拠点とする。グローバルな権力による資源の収奪のプロセスや異性愛中心の家父長制的な暴力に対するレジリエンス、不服従、欲望の物語を作り上げ、スペキュラティブ・フィクション、シアターゲーム、ミュージックビデオ、土地の祭礼や工芸への関心を統合し、クィア/デコロニアルの観点から作品制作を行う。2022年、第59回ヴェネチア・ビエンナーレメキシコ館に出展。
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