黒沢 清(映画監督)
映画とは何か、みなさん既にご存知だと思います。
好きな作品となると人それぞれでしょうが、
小さいころ映画館で見た思い出の映画とか、気になるスターの最新作とか、
まあおよそ人の心の中で映画が占める位置は今も昔も変わりなく、
普遍的な文化として定着している…本当にそうでしょうか。
じゃあ、映画と映像の違いは?実写とアニメは?
映画はどうしてだいたい2時間ぐらいなの?監督って何する人?
などと問うてみると、実はどれも答えはあやふやで、
世間で知られているほどには映画について誰もよく理解してはいないのです。
何を隠そう、40年近くこの業界にいる私自身、
実はいまだに映画についてよくわかっていません。
と言うか、見れば見るほど、撮れば撮るほどわからなくなる。
このたび、映画についてみなさんに少しでも知ってもらう為ではなく、
映画について何となく知っているみなさんの思い込みを少しでも揺るがせたい為に、
この講演を行うことにしました。どうぞ覚悟しておいてください。
日時: 2017年6月15日(木)16:20 ~ 17:50
講師:黒沢 清
1955年生まれ。大学時代から8ミリ映画を撮り始め、1983年、『神田川淫乱戦争』で商業映画デビュー。『CURE』(97)で世界的に注目され、以降も数々の話題作を発表。『回路』(2000)、『アカルイミライ』(02)、『叫』(06)、『トウキョウソナタ』(08)、『Seventh Code』(13)、『岸辺の旅』(14)、『クリーピー 偽りの隣人』(16)、など海外の映画祭への出品作・受賞作多数。手がける作品は常に国内外で高い評価を受けている。テレビ、MV等の領域でも活動し、映画批評や小説などの著作も多数。昨年には海外初進出作品『ダゲレオタイプの女』(16)も公開。また同年に川喜多賞、毎日芸術賞を受賞した。今年9月には最新作『散歩する侵略者』(16)が全国公開予定。本作も第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門への正式出品が決定した。
今福龍太(文化人類学者)
近代とは「大陸」の原理が世界を覆い尽くしてゆく過程でした。
国家、領土、法、教育、市場経済といった社会制度はすべて、
排他的所有と合理性にもとづく大陸原理の産物です。
世界を支配してきたこれらの制度が人間の日々の幸福から離反してしまったいま、
「群島」のヴィジョンがあらたな可能性をもった生き方の倫理として浮上しています。
私たちの世界像を〈群島〉として再創造する試み、『群島─世界論』のエッセンスを、
具体的な「島」のイメージに寄り添いながら語ります。
★本講演会は本学ギャラリーフロールで開催する「高見島─京都:日常の果て」と連携して、2部構成で行われます。
第1部:今福龍太氏による講演会
第2部:同時開催の「高見島─京都:日常の果て」展に関連した、芸術学部教員との「島」をめぐるトーク
【関連展覧会】高見島─京都:日常の果て
2017年6月16日(金)~7月15日(土)会場:京都精華大学ギャラリーフロール
休館日:毎週日曜日※6/18(日)は開館/入館無料
日時: 2017年7月14日(金)15:00 ~ 17:00
講師:今福龍太
いまふく・りゅうた●1955年生まれ。文化人類学者・批評家。東京外国語大学大学院教授。サンパウロ・カトリック大学客員教授として偶景論のセミナーを随時担当。群島に遊動的な学びの場の創造を求めて2002年より巡礼型の野外学舎〈奄美自由大学〉を主宰。著書に『ブラジルのホモ・ルーデンス』(月曜社)、『ミニマ・グラシア』『薄墨色の文法』『ジェロニモたちの方舟』(以上、岩波書店)、『レヴィ=ストロース 夜と音楽』(みすず書房)、『書物変身譚』(新潮社)、『わたしたちは難破者である』『わたしたちは砂粒に還る』(以上、河出書房新社)など。本年『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)により第68回讀売文学賞受賞。2017年3月に『クレオール主義』、『群島─世界論』を柱とした新編集のアンソロジー『今福龍太コレクション〈パルティータ〉』(全5巻、水声社)の刊行がスタートした。
和栗由紀夫(舞踏家)
世界的に活躍する舞踏家・和栗由紀夫氏が、舞踏の世界に案内します。
まず和栗氏の舞踏をご覧ください。続く講義では貴重な公演映像と共に、舞踏の歴史をたどります。
また、「舞踏」の創始者、土方巽氏に自ら学んだ和栗氏が、土方氏の振付の言葉である「舞踏譜」についてお話しします。
聞き手は美学者の谷川渥氏が務め、終盤では、舞踏と美術との関わりについて対話を深めていきます。
日時: 10月19日 (木) 14:40 - 16:40
講師:和栗由紀夫
わぐり・ゆきお●1952年、東京生まれ。戦後の日本が生んだ独特の芸術として国際的に評価されている「舞踏」の創始者、土方巽直系の舞踏家。98年には、言葉を通して身体イメージを喚起する土方系舞踏独特の「舞踏譜」の詳細を初めて明らかにしたCD-ROM『舞踏花伝』(06年にDVD化)を発表した。土方舞踏を生きた形で次世代に伝えるキーマンとして、国内外で活躍を続ける。群舞やソロの創作、振付・演出、演劇への客演なども多数。98年に谷川渥氏の著作「幻想の地誌学」を振り付けし、舞踏公演を行う。他に「幻想の地誌学Ⅱ」(02)、「肉体の迷宮」(10)も上演した。
皆川 明(minä perhonen デザイナー)
日時: 11月9日 (木) 14:40 - 16:10
講師:皆川 明
みながわ・あきら●1967年東京生まれ。1995年に自身のファッションブランド「minä(2003年よりminä perhonen)」を設立。時の経過により色あせることのないデザインを目指し、想像を込めたオリジナルデザインの生地による服作りを進めながら、インテリアファブリックや家具、陶磁器など暮らしに寄り添うデザインへと活動を広げている。また、デンマークKvadrat、スウェーデンKLIPPANなどのテキスタイルブランド、さらには陶磁器ブランドRichard Ginoriへのデザイン提供や、東京スカイツリーをはじめとするユニフォームデザイン、新聞小説の挿画なども手掛ける。2006年「毎日ファッション大賞」大賞、「2015毎日デザイン賞」、「平成28年度(第66回)芸術選奨」美術部門文部科学大臣新人賞を受賞。
呉座勇一(日本史学者)
応仁の乱という言葉を聞いたことがないという人はいないでしょう。
その反面、どのような戦乱だったのか正確に説明できる人は少ないと思います。
それは、この乱が源平合戦や関ヶ原の戦いのような「英雄物語」とは対極にある不条理で
不毛なドタバタ劇で、小説やマンガ、ドラマ、映画などで扱われることがほとんどなかったからでしょう。
にもかかわらず拙著『応仁の乱』がヒットしたという事実は、人々が「英雄史観」に
リアリティを感じられなくなってきたことを意味するのではないでしょうか。
応仁の乱を描いた創作物や学習マンガなどを入口にして、
今私たちが応仁の乱から学ぶべきものは何なのか、考えていきましょう。(講師より)
聞き手:すがやみつる(本学マンガ学部教員・マンガ家)
日時: 12月14日 (木) 14:40 - 16:10
講師:呉座勇一
ござ・ゆういち●1980年生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。専攻は日本中世史。現在は国際日本文化研究センター助教。2014年に『戦争の日本中世史』(新潮選書)で角川財団学芸賞を受賞。2016年に出版した『応仁の乱』(中公新書)は2017年7月現在で40万部を売上げ、歴史書としては異例のベストセラーとなり、注目を集めている。他の著書に『一揆の原理』(ちくま学芸文庫)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版)など。
喜多郎(音楽家)
アセンブリーアワーの特別編として、
卒業・修了発表展「京都精華大学展2018」の会期中に、
世界的に活躍する音楽家の喜多郎氏を迎え、コンサートを開催します。
イベントは、音楽家の岡野弘幹氏や舞踏手の入月絢氏との共演、
音楽と宇宙映像の融合の試み「古事記と宇宙」、トークの三部構成です。
タイトルの「未来への華押(かおう)」は学長の竹宮惠子が発案しました。
イベントの演出には学生や教職員も参加しています。
アセンブリーアワー講演会「未来への華押」
第1部 喜多郎・岡野弘幹による演奏(舞踏:入月絢)
第2部 喜多郎 音楽と宇宙映像の融合の試み「古事記と宇宙」ライブ演奏
第3部 トーク
会場:京都精華大学明窓館 M-201講義室
キャンパスマップ
※通常のアセンブリーアワーと会場が異なります。ご注意ください
スクールバス運行時刻表
かつて武士が用いた、個人を表す印である『華押(かおう)』には、きっと契約印のような意味もある。
まだ見ぬ『未来への約束』を、若者たちはみな必ず持つべきだ。
それが次の一歩を踏み出させ、新しい自分を築く礎になるように。
それはまだ心の中だけのものであっても、胸を温めるひとすじの矢になって行く道を示してくれるだろう。
(テーマ「未来への華押」によせて 学長 竹宮惠子)
京都精華大学展2018 卒業・修了発表展(同時開催)
日時: 2月17日(土)18:00開演(17:00開場)
講師:喜多郎
喜多郎/Kitaro
演奏家・作曲家。1953年生まれ。1970年代より演奏家として活動、80年代にシンセサイザー音楽で世界に名を馳せ、数々の話題作を発表。音楽シーンに大きな足跡を残し、今日も、世界的に最も高い評価を受ける日本人アーティストの一人として活躍を続ける。主な作品にNHK「シルクロード」の音楽(1980)、映画「天と地」の音楽(1993/ゴールデングローブ賞作曲賞)、「Thinking of you」(1999/第43回グラミー賞 最優秀ニューエイジアルバム賞)、「空海の旅」シリーズ(2003~現在)他多数。「空海の旅5」(2017)は、第60回グラミー賞にノミネートされ、自身17回目のノミネーションとなった。自然界からインスピレーションを受けて生み出す独創的な音楽世界は、時代と国境を越えて多くの人々に親しまれている。
■第1部出演者
岡野弘幹/Okano Hiroki
音楽家・サウンドアーティスト。1964年生まれ。90年にドイツIC DIGITよりワールドデビュー。民族楽器を多彩に扱い、日本的感性で表現したアンビエントミュージックは欧米のメディアでも広く紹介されている。現在までに発表したソロ、グループのアルバムは、30作以上。国内外の野外フェスにも数多く出演。ライフワークとして世界の聖地、自然遺産、全国の著名社寺などでの演奏活動を継続するかたわら、サウンドアート制作、映画・テレビ番組等への楽曲提供、様々なイベントの音楽監督など、活動は多岐に渡る。近年の活動に「大琳派祭」(2015/京都国立博物館)音楽監督と演奏、「第41回全国育樹祭」(2017/香川)メインアトラクションの音楽監督と演奏など。
入月絢/Irizuki Aya
フィジカルシアターアーティスト・舞踏手。舞踏を故・元藤燁子、玉野黄市、故・和栗由紀夫らに師事。東京芸術大学美術学部を卒業後渡英しTheatre de l’Ande Fouにて学位を取得、公益吉野石膏美術振興財団による助成にてドイツ研修。これまで世界10カ国以上での公演や指導を行う。08年に準主演した映画「Kirschblüten-HANAMI」(独/監督:ドリス・ドリエ)はベルリン映画祭金熊賞他、各映画賞受賞・ノミネートされる。16年「フクシマ・モナムール」(独/監督:ドリス・ドリエ)出演。17年より喜多郎氏の世界ツアーにてソロダンサーを務める。美術、舞踏、コーポレアルマイムを縦横無尽に表現手段とする舞台作品はしばしば幻想的で独創的であると評価を受ける。
写真:小野塚 誠